「そんな人どこにいるんですか」という反論

自分の(あるいは仲間の)意見が批判された際に、「そんな人どこにいるんですか」という反論をする人が時々いる。こうした人は専門分野や政治的立場を問わず存在するが、とくにフェミニスト研究者や経済学者に多いという印象がある。たとえば、「性差を否定…

自己責任論再考

個人の貧困の問題が「自己責任」であるか否かについて、知的な人たちや良識のある人たちの間では一蹴されているが、現実社会ではまだまだ根強いものがある。それは決して理由のないことではない。世襲的な身分制度がそれになりに残っていて、貧しい農村に生…

このあいだびっくりしたのは、1965年から75年の10年間、高度経済成長期ですけど、名目賃金が500%上がっているんですよ。5倍ですよね。5万円だった人が25万円になった。そういう時代ですから、この会社についていけば大変かもしれないけど食っていける、と…

「転向」する人と「首尾一貫」な人

「主張の賛否はともかく首尾一貫している」という表現がよくある。これは基本的に褒め言葉である。例えば現在でも90年代と変わらない「構造改革」の主張を堅持している人が、その批判へと「転向」した人よりも相対的に好意的に評価されている。しかし私は、…

日本型福祉と構造改革の野合についてさらに補足。私の主張は、ここで散々検討してきた「小さな福祉国家」という日本の世論は、官僚主導型で企業・家族福祉に依存する日本型福祉の伝統を温存する形で、「構造改革」が推し進められてきたことによって形成され…

前回の続きというか補足。日本の福祉国家というのは、完全に官僚主導型で、しかも企業組織や家族の相互扶助に依存する形で構築されてきた。「民間でできることは民間に」という構造改革のスローガンを国民が支持してきたのは、市場競争による活力の向上を求…

これまでの日本において、「福祉国家」が存在したことはありません。「福祉国家」とは似て非なる「開発主義国家」であったわけです。「開発主義国家」であった日本では、政府の財政力、行政力は、企業、業界、各種利益団体のところに注がれます。その結果と…

1990年代以降に、税金についての負担の方法は「受益者負担」の考え方が主流になり、「応能負担」への合意は非常に困難になっている。しかしよく言われているように、受益者負担の原則は高速料金の負担のように、あくまで通常よりも高度なサービスを敢えて求…

現在、日本の国民負担率(租税、社会保障負担の合計)は40・1%と、米国の34・5%より高いものの、英独の50%前後などと比べ低水準です。しかし、少子高齢化で、好むと好まざるとにかかわらず、今後、国民負担率は上昇していくでしょう。 (中略) …

最近書いた「小さな福祉国家」についてのまとめ。最近、日本の世論は社会保障の充実を切実にもとめながら、増税よりも行政の規模を縮小して、そこで「浮いたお金」によって財源を捻出するという、「小さな福祉国家」への道を選好している。一般に社会保障の…

そりゃね、もっぱら公務員数の大小だけで「大きな政府」「小さな政府」を測るんなら、「小さな政府」で「大きな福祉」ってのはじゅうぶんありうるよ。だけど、たとえば予算額の大小で「大きな政府」「小さな政府」を測るんなら。「大きな福祉」即「大きな政…

何で日本では「小さな福祉国家」という議論が、さほど精査されることもなく流通しているのだろうか。一つには、1990年代ぐらいまでは企業や家族によるセーフティネットが、それなりに機能していたことがある。終身雇用制度も健在で、団塊世代の給与水準も高…

小さな福祉国家

前回の続きで、税金も上げずに官僚も減らすが医療や介護を充実させるという「小さな福祉国家」は、果たして可能なのかについて簡単に考察。一つには、旧来のように企業と家族のセーフティネットを活用する道である。しかし、いま起っている問題はこれでは対…

メディア上でよく語られる増税反対論には以下の二つがある。第一には、「増税の前に行政の無駄を削るべきだ」と言う反対論である。しかし1990年代のような、素人目にも採算が取れない大規模な公共事業といった、わかりやすい「無駄」の事例は今はさほど目立…

しかし、数人の方が述べていますが、所得に応じて入学金をスライドさせたり、授業料をスライドさせるといった発想はなぜ生まれてくるのでしょうか? そもそも、自らの努力であれ、親が残した物であれ高い所得を得ている人間からたくさんのお金を取ろうという…

河村名古屋市長 給与受け取りを拒否 公約実行 5月18日16時6分配信 毎日新聞 名古屋市の河村たかし市長は18日の定例会見で、同日支払われる予定だった給与の受け取りを拒否したことを明らかにした。市長選では給与を年800万円にする公約を掲げて当選して…

さらに「軍隊の論理」「不安の論理」の続きというかメモ書き。昔の日本型企業社会は、新入社員をまったくの無能力状態から一から手取り足取り訓練し、当の企業を離脱してはもはや生きることが不可能であるような人格をつくりあげて、社員の企業に対する全面…

前回の補足。「軍隊の論理」というのは、人間を一から手取り足取り訓練して、組織のために全身全霊を傾けるような人格に育て上げることを目標とする。簡単に言えば、長年「会社人間」と揶揄されてきたような、「組織を離れたら役立たず」な人間にしていく。…

この10数年ほどの間に、人々を組織化する論理が「軍隊の論理」から「不安の論理」へと転換している。軍隊の論理というのは、ルールを徹底させ、厳しい訓練を施し、組織とそのリーダーに対する忠誠を誓わせるというものであり、少し前までの日本型企業社会は…

社会的な再配分には市場によるものと税金によるものとがあり、再配分と言う点で根本的な違いはない。その中間形態もあるのかもしれないが、とりあえず二つにわけておく。市場による再配分は、一言で言うと「魅力のある者・物」に対して優先的に再配分する原…

今や、民間企業は必死の形相で経費を削減し、霞ヶ関はかってないジャブジャブの予算を、できるだけ短期間に、ばらまけるだけバラマク、という仕事に忙殺されている。(中略) 今回、麻生内閣の支持率を(選挙前に)引き上げるためにばらまかれる15兆円は、お…

市民税のカット目標は1割、250億円。納税者とその配偶者、子どもを含めると180万人が恩恵を受けると説明。手法は、定率か定額かなど今後、検討する。税金を支払っていない層にも現金の支給を考慮する。 カット分は役所内の「無駄遣いを根絶」し補う。…

「北風」の新入社員の意識への見事な効果 http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/ 社会経済生産性本部から昔の日本生産性本部に名称復帰したJPCが、毎年恒例の新入社員意識調査を公表していますが、http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/mdd/activity0…

公務員と民間職員などの実収入の動きをグラフ化してみる 多少の変化率などどこかにぶっ飛んでしまうほど、官公職員の実収入が高いことが分かる。冒頭でも触れたようにこの額は、通常の給与以外に手当てやボーナスなどの収入も全部あわせて単純に12か月分で割…

在日がどうして「特権者」と見られるのかといえば、「立場の弱い少数者」であることを前面に押し出して自己主張を貫けるということに尽きると思う。2000年代以降に一定の正社員層を含む不安定・下層労働者が拡大し、社会保障制度も完全に先細りになっている…

昨日の続き。記憶する限り、1990年代末くらいまで日本の戦争責任を指弾するような特集が、報道系の番組でやたらに多かった。どう見ても弁護できないような稚拙な反日ナショナリズムの主張に対しても、「苦しい歴史の記憶を背負った彼らの声を理解すべきだ」…

「在特会」ら、ノリコさんが通う中学前でデモ行進 「カルデロン一家を日本から追放しろ!」 フィリピン人カルデロンさん一家の強制退去問題で、「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)などの市民団体が、4月11日埼玉県蕨市内で、「犯罪フィリピン…

先日荻上チキさんと話していて投げかけられた質問は,「経済学者って何であんなに偉そうなんですか?」というもの.あぁぁぁぁもう自分も含めて思い当たる節が多すぎる.その時は茶飲み話だったんでたいした話はしませんでしたが,実際どうなんだろ.http://…

先生いじめ

愛知県半田市の市立中学校で、担任に不満を抱いた1年生の男子生徒十数人が「先生を流産させる会」と称し、妊娠中の30代の女性教諭に対し、いすのねじを緩めたり、給食に異物を混入したりしていたことが分かった。 同市学校教育課によると、生徒らは今年1…

アランさんと妻のサラさん(38)は、偽造パスポートでそれぞれ16、17年前に入国した。その後、現在は中学1年生のノリコさん(13)が生まれたが、06年に不法滞在が発覚して、一家の強制退去処分が08年9月に最高裁で確定した。しかし、アランさん一家は、ノリコさ…