市民税のカット目標は1割、250億円。納税者とその配偶者、子どもを含めると180万人が恩恵を受けると説明。手法は、定率か定額かなど今後、検討する。税金を支払っていない層にも現金の支給を考慮する。

 カット分は役所内の「無駄遣いを根絶」し補う。各局長にカットすべき予算枠を指示して査定権も与える「庁内分権」を実施し、どの事業を廃止するかは職員が自ら判断できる態勢をつくる。

 地域委員会は、選挙で選ばれた地域の代表で委員会を構成し、福祉や防犯、まちづくりなど地域の問題を解決するために、予算の使い方を自分たちで決める。実際の施策は職員や、委託された民間団体が行う。

 市職員は、雇用を維持しつつ、人件費の総額を1割カット。幹部職員を中心に給与を見直し、給与が500万円以下の若手職員は対象としない。市長退職金は廃止し、市長給与も大幅に削減する。

 議会改革を進め、議員の定数を1割カット。議員に支給される政務調査費は使途を全面公開し、費用弁償は実費支給に改める。

 こうしたカットの一方で「福祉を切ることは絶対ない」。敬老パスは堅持し、高齢者の医療費は自己負担分に対し助成を実施。70−74歳の医療費の窓口負担が現行の1割から2割に引き上げられても、その分は市単独で助成する。就学前の子どもに1人当たり5万−10万円の子育て支援券を配る。

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/ele_mayor/list/200904/CK2009040502000162.html

最近話題になった地方首長選の顔ぶれは、橋下、森田そして河村と、全員が見事なまでの「小さな政府」路線である。「愛国心」の必要性を強調する右派ナショナリストいう点でも共通している。河村の主張はラジオやテレビで耳にしたことがあるが、議員の給与廃止(ボランティア制)、公務員の大幅削減、市場競争原理の徹底化など、私の知る限り最も徹底したラディカルな自由主義者である。そして族議員や官僚に向かって、「既得権」や「特権」などという言葉を使って罵倒し、独特の名古屋弁で「庶民の顔」をしたがるポピュリストである。

残念ながら、「小さな政府」路線で福祉が充実したと言う例を私は知らない。橋下がそうであったように、公約では福祉重視の顔をしつつ、現実には削減の方向になっていくに違いない。河村がわかっているのかどうか、税金が減ると言うのは負担の総量が減ると言う意味では決してない。いままで行政が税金を通じて支援できていたものが難しくなり、個人の責任で負担していかざるを得なくなる、という方向を意味しているのである。減税されたらかといって、そして職員の給与が減ったからといって、ワーキングプアや介護難民などが減るわけでは決してない。むしろ普通に考えれば、その逆の可能性のほうが高い。

こういう路線が少なくとも今の日本に不適切であったことは、いろいろなところで反省されるようになっている。ところが、地方首長選では(色々な意味でいい加減だった)小泉元首相の路線がもっと純化したような候補者が、次々と当選を果たしている。やはり日本における「構造改革」を支持した心性というのは、豊かな中間層が解体していくなかで、「官僚や議員はもっと苦労して働け」というルサンチマンを代弁する以上の意味をもっていなかったのだと思う。その反転として、ラディカルな改革を一身に背負ってくれる(ように見える)強力な指導者に対する願望が強まっていることが、最近の首長選の結果に表れていると言えるだろう。