某所にある社会保険局にいって彼女の死亡届をした。国民年金をマジメに払っていた人だったので、どのぐらい還付されるのかな、と思っていたのだが、300万円これまで払っていて、遺族に支払われるのは死亡一時金なる12万円である。のこりの288万円はそのまま国のもの。ろくなものではない。あまりに腹がたったので、「詐欺ですね、これ」といったら係の人が絶句してもうすこしエライ人がでてきた。生命保険だって元本は補償されますよね、普通、といったら「国がみんなでやっている制度なので、ご理解ください」とのこと。国がみんなで、という言葉に”國體”というおどろおどろしい旧字があたまをかすめた。文句をいうならば、選挙で、とまでいわれた。まあ、そうだろう。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/kmiura/20090628

ブックマークなどを見ても、年金制度の理念が世代間扶助にあるというのがよくわかっていない人が結構いて驚いた。

年金というのは払った分を戻してもらう制度ではなく、現役世代の収めた年金を再配分してもらう制度である。だから、長生きするほど得にできている制度であって、その場合は払った分以上に年金を受け取ることになる(実際80代以上の人はそうなっている)。こうした賦課方式に対して積立方式という考え方もあるが、それだと再配分機能がほとんどなく、年金制度自体が無意味になっているようにしか思えない。「男女格差」も80年代まで男性正社員中心社会という現実があった以上、その是正は必要だとしても、この歴史を無視して批判しても仕方がない。

日本では所得税や消費税などの国・政府レベルでの税金を上げられなかった分、社会保険や年金といった事業体・世帯レベルでの徴収で対応してきたという事情がある。しかし現在、これまでの年金制度が過去の豊かな現役世代と貧しい高齢者という図式を基づいていたために、もはや機能不全状態になっているところがある。つまり、所得に関わらず一律負担なので、所得再配分の役割を果たしておらず、むしろ若年低所得層から高齢富裕層への再配分になってしまっている側面があるのである。

この現実から、年金制度は不要でベーシックインカムで充分という実現不能な暴論を平気で言う人もいるが(そう思っていないのが最悪なのだが)、世代間扶助という制度理念自体は尊重すべきものであり、むしろ高齢富裕層から若年貧困層への再配分のチャンネルとして活用していく道を模索するだけだと思う。