医療への満足度大きく回復

2007年7月の参議委員選挙では市場主義批判、格差批判の風潮の中で自民党が大敗し、参議院では野党が多数を占め、いわゆる「ねじれ国会」となった。こうした状況の中で政権与党は国民各層および中央・地方の格差是正、福祉医療改善へ向け、それまでの財政再建に重点をおいた小泉路線の修正を図ったが、後期高齢者医療制度の導入においても所得の低い高齢者層への負担の軽減を図り、実際は負担の軽くなった高齢者も多かった。

 弱者への配慮が大きな風潮となった点やこうした実際上の負担軽減などにより、医療への満足度は上昇したと考えられる。診療報酬について抑制基調であったことも、医療提供側としては医師不足というかたちで「医療崩壊」をもたらしたが、医療を受ける側では負担の軽減となってむしろ満足度を高める方向へ作用したのではないかと思われる。
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1850.html

たぶんこの解釈は違うと思う。むしろ「医療崩壊」の報道が激増したことによって、医療に対する期待度が低下し、そのことが相対的に満足度を押し上げていると解釈すべきだろう。格差感が若干ながら減少しているという奇妙な現象もそうで、旧来の「総中流」の観念が完全に解体したことによって、格差社会を諦め気味に受け入れはじめたと理解したほうがよい。もちろん実際のところはまだわからないが、少なくともそう考えたほうが自然である。

これは反省を含めての話、「構造改革」の結果に対する幻滅があまりに強すぎることで、社会全体の停滞・衰退をよしとするような雰囲気が蔓延しはじめているような気がする。それが成熟の徴であればよいのかもしれないが、実際のところは被害者意識と表裏一体のところがあって、いろんなところで足の引っ張り合いを生み出しているだけのように思われる。