経産次官の「デイトレーダーはバカ」発言は案外重大だ
http://diamond.jp/series/yamazaki/10017/

それにしても、経産省事務次官が、これほど日本企業の経営者の保護に熱心であることの理由は何なのだろう。一つの推測は、規制の一部を権限として握る経産省が自らの立場を守るために、投資家に脅かされている経営者を味方に付けたいのだろうということであり、もう一つには、既存経営者層への人気取りが北畑氏の今後の天下り人生にプラスになるからなのか、ということだが、もちろん、どちらも好ましいことではない。要は、不出来な官僚が、不出来な経営者の保身の心に、深く共感して感化されてしまったということなのだろうか。

そもそも、日本国の官僚が「日本企業の経営者の保護に熱心である」ことは、いい悪いは措くとしても「ごく普通のこと」ではないのだろうか。ギャンブルの延長線上で株投資をしている人々を「不健全」と考えることは別に当たり前ではないのか。そして、こうした官僚の主張の由来を「保身」というあまりに凡庸な解釈でしか切り捨てることしかできない「経済評論家」とは一体何なのか・・・・。

確かに経産次官の発言は経済に対して無知・無理解なのかもしれない。しかし、上記のような中学生の作文以下の、ネット上の落書きレベルの解釈しか下せない経済評論家はそれ以上の「バカ」だと思う。ある市場経済の制度が、ある特定の社会の中はうまく機能しないこともあることは、社会自体が多種多様であることが宿命なのだから別に当然のことである。ところがメディア上で声の大きい経済評論家は経済の成長が鈍ったりすると、その原因を丁寧に分析する前に、なぜか「改革が足りない」とか「保身に走っている」という、およそ経済の専門家とは思えないような叱責や説教、道徳に走るのである。

海外の投資家が大挙して日本に投資してたとしても、国民の生活が格段によくなるわけではないし、それで税収が増えたとしても少子高齢化の医療費高騰の問題を根底から克服しうるものではない、ということは少し常識のある人なら誰でも知っている。最近のアンケート調査では、官僚批判が強い一方で、「効率・競争」の「小さな政府」よりも「高福祉・高負担」の「大きな政府」志向が強まっていることがはっきりしているが、この結果はさすがに国民が「経済成長」で将来の社会保障費をまかなえると考えるほど、日本国民は能天気ではないことを示している。

メディア上の経済評論家の歯切れのよい専門的な議論に、特に「あの政治家・官僚は経済の仕組みがわかっていない」という断定的な物言いを真に受ける必要は全くない。実際、上記の文章を書いた評論家は、当の官僚を徹底的に馬鹿扱いし、いかに「恥ずかしい」「みっともない」発言であるのかを強調しているが、むしろ「バカでみっともなくても大事で正しいこと」を、きちんと評価していくべきであると考える。