道路と地方

ガソリンの暫定税率廃止をめぐって散々議論されているが、「地方を守る」ためには「よほどの切羽詰った必要性」のない限り地方に道路をつくるべきではない。少なくとも、この20年に地方における高速道路・国道の整備が、いかに地方を衰退させてきたかの可能性を真面目に反省しなければならない。

(1)都市部の過密化による環境悪化で、郊外住宅地の建設が進む
(2)マイカーを持つ人が増えて渋滞が慢性化し、国道の建設や拡張工事が行なわれる。
(3)その沿道には、東京資本の郊外型SCやコンビニ、家電量販店ができ、病院や企業、官公庁までもが「便利で広い」ということで郊外に移転する
(4)新しい道路も交通量が増えて渋滞が起こり始める一方で、自動車に対応していない地域の小商店はますます衰退していく。

いま道路の必要性を声高に訴えている自治体の首長は、あくまでこの(4)の段階で起こっている「渋滞がひどい」あるいは「田舎の人は買い物にも苦労する」という経験に基づいているのだと考えられる。このように、道路による生活インフラの整備という方策をとることで、ますます地方の住民を自動車依存の生活に追い込んでいき、それによってまた新しい道路が必要になってしまうという悪循環を繰り返してきた。働く人のほとんどが非正規雇用のパート・アルバイトである、東京資本の郊外型SCやコンビニに人々の流れが向かう一方で、地元の住民たちが地道に築き上げてきた商店街は猛スピードで素通りされていく。

こうした悪循環のメカニズムは徐々に指摘されるようになっているが、地方自治体の首長は依然として「道路が必要だ」の論理に縛られているように思われる。しかし、この20年に地方が経験してきたことは、そのことがますます地方の衰退を招く方向に作用するということである。「道路族」と言われる人たちの罪は、「利権」や「癒着」にあるのでは決してなく、こうしたメカニズムにあまりに鈍感で、道路ができると地方が活性化するというウソを振りまいてきたことにある。しかもそれを全く反省しようとすることもなく、今でも平然と「地方は道路が必要だ」と言い続けている。

ちなみに、宮崎県の東国原知事は企業誘致に熱心だが、彼のやっていることは下手するとバブル時代の開発の二の舞であり、少なくとも他の県が決して真似するべきではないと思う。彼の言っている「企業誘致のために道路が必要」というのは、まさにこの20年全国の地方自治体がやろうとしてきたことのはずである。