おひとりさまの老後

おひとりさまの老後

この本立ち読みでざっと読んで、個人的にはなかなか面白いと思ったのだが、amazonの書評欄をのぞくと「恵まれた人の話に過ぎない」という、ルサンチマンに満ちた評価が多くて考え込んでしまった。たしかに、読んでてそういう違和感がないわけではなかったが、この程度の書き方で「持てる者の傲慢」を感じて腹が立ってくるとしたら、日本社会における「老後不安」というか「老後絶望」もかなり進行しているということで、確かにこの日本社会の空気に鈍感だったことは著者にも一定の責任があるのかもしれない。

この本は「啓蒙書」的なところがあるのである程度の反発は折り込みだろうが、「やはり妻に介護してもらって家で看取られたい」という保守的な人間ではなく、読者層として想定していた「老後の生活が不安」という人から投げかけられるのは、著者にとってもかなりの予想外だったはずである。「フェミニズムは高収入キャリア女性を代弁しているに過ぎない」という批判(というか非難)があちこちから出始めているが、この本も意図せざる形でそういう印象を強めるものになってしまっているようである。

著者がこれからこうしたルサンチマンに真剣に向き合っていくのか、それとも保守論客に対するように「無知」「無理解」でバッサリ切り捨ててしまうのかに、彼女が学者として信用に値するのか否かが試されているのかなという感じがする。