ガソリン価格の格差

ガソリン価格が急騰している。かつて1リットル100円程度という常識があったが、そんな時代が本当にあったのかというくらい昔に感じられる。

専門化が分析する原油価格上昇の理由を聞いていると、新たな大油田みたいなものが発見でもされない限り、将来的に1リットル100円という時代へと戻る可能性はほとんどなさそうだ。原油価格が上昇すること自体は悪いことばかりとは言えない。従来が開発コストの理由で見送られてきた、石油にかわる代替資源に対する研究開発が急速に進展する可能性がある。「省エネ」が今まで以上に商品価値を持つようになることも確実である。

しかし問題は自動車である。特に日本では(欧米でも同じかもしれないが)大都市圏と地方とでは大きな「格差」がある。公共交通のネットワークが緻密な大都市圏では、自動車は必要ないという以上に、駐車場や車検にかかる費用や手間ひまを考えればむしろ邪魔な場合も多い。地下鉄の駅やバス停がどこにでもあるので、自動車なしでも通勤や買い物は充分可能である。自動車はあったほうが便利かもしれないが、なくても基本的な生活を送る上で特に支障があるわけではない。

しかし地方では全くそうではなく、自動車がないと通勤も買い物も非常に苦労するという場合がほとんどである。駅やバス停がすぐ近くにあるとは限らないし、本数もそう頻繁ではない。地方都市の中心部に住んでいたとしても、中心市街地はほとんどシャッター通りになっており、郊外店にまで自動車でいく必要がある。つまり地方の人間は裕福ではなくても、ある程度ほかの生活を切り詰めても自動車を持つ必要がある。要するに、ガソリン価格の上昇による「痛み」は、明らかに大都市圏より地方の人間のほうが強く感じられてしまうという「格差」が生じているのである。

本音は「みんな自動車に乗るのをやめたほうがいい」というところなのだが、現実の地方の人間は自動車がなければ最低限の生活すら送れない。では自動車すら買えない(特に若い世代の)人はどうなるのかというと、上昇志向の強い人は大都市圏に引っ越すだろうが、そうでない人は地方に「引きこもっている」ような気がする。ほとんど想像だけれど。