祝WBC優勝!

WBCで日本が優勝した。正直なところ、アメリカがここまで不甲斐なく、イチローがここまでやる気を見せなければ優勝はなかっただろうが、もっと大きな理由は選手のモチベーションだろう。

2000年頃に野球の国際大会のプロ解禁となったからというもの、日本はレベルの高低はあれプロ選手を送り込んできたが、3位にすら入れないという不甲斐ない状況が続いた。アマ代表のころはキューバには敵わなかったとはいえ、それでも2、3位にはつけることが多かった。1996年のアトランタ五輪は(松中、井口、福留、谷、今岡という今から見ると相当な豪華メンバーだった)、優勝候補筆頭だったアメリカを準決勝で大差で下し、王者キューバには中盤まで6−6の同点と競り合いを演じ、終盤に破壊力のある打撃に屈したが堂々の銀メダルに輝いた。選手達が必死かつ生き生きとプレーしており、チームワークも非常によかったのが印象に残っている。アマ五輪時代の日本は本当に強かった。

ところがプロの選手達が入ってから全てがおかしくなった。シドニーアトランタと、プロ野球で日頃発揮している実力を見ている人間からすれば、選手達のパフォーマンスは明らかに物足りないものだった。国際大会に出場する選手を見ると、「国のために全力をつくす」といいながら、どこか無理してやる気を出しているような感は否めなかった。また一流選手をかき集めたものの、チームとしての結束力が感じられなかった。五輪メンバーのインタビューの受け答えを聞いていると、「義務だから金メダルを獲れるように頑張る」という受身的なニュアンスが感じられ、「金メダルを獲る!」という前向きなモチベーションはほとんどなかったように思う。これはある意味で当然で、プロ野球のスターにとって五輪は「野球界世界最高の大会」ではないし、優勝したところで既に高い自らの人気や年俸に大きく影響するわけではなかったからである。

今大会日本が優勝できたのは、さまざまなツキがあったことは間違いないが、明らかに選手のモチベーションが過去の国際大会とは大きく異なっていたことが大きい。特に日本選手にはカリスマ的な存在であるイチローがここまで必死になってくれたおかげで(序盤は気負いすぎで悪いほうにも作用したが)、WBCがいかに野球生命を賭けるべき価値ある大会であるかが日本選手内に浸透していった。また日本国内の盛り上がり方も、過去の五輪よりも段違いに高いものだったことも、選手のモチベーションを高める結果になった。アトランタ五輪のメンバーほどではないにせよ、今回のメンバーの顔つきは過去にプロが参加した五輪とは明らかに異なっていた。

それにしても、この異常な盛り上がり方は、一次リーグの中国、台湾戦の観客がガラガラだったことを考えると、嬉しい反面かなりの違和感もある。私は野球に熱を入れる一方で、サッカーW杯とかは負けるよりは勝ったほうがいいかな、くらいにしか考えていない人間である。今熱狂している人の多くは間違いなくサッカーW杯でも熱狂しているんだろうが、昔からあまりこの気分が理解できないでいる。かつて相撲にせよプロ野球にせよ、人気のあったスポーツは「日本最高」を目指すものだった。巨人はそうした「日本最高のプロスポーツ集団」の象徴として人気を博していた。いま相撲や巨人の人気が凋落する一方で、「世界最高」を争う国家間の戦いという形でスポーツの人気が盛り上がるという傾向が強まっているように思われる。極端な話、「日本代表」であればスポーツの中身に関係なく熱狂できるのである。これがいいことなのかどうかは正直なところよくわからないが、個人的には今一つ理解できない気分である。