堀江社長が今更の如く批判されている。本当に腹が立つ。

経済に素人のコメンテーターが批判しているのはまだ許せるとしても、経済の専門家も一緒になって叩いているのがさすがに気分が悪かった。堀江社長が投資を延々続けることで実体以上に会社をでかくみせようとする怪しい企業家であること、法律や市場のルールに引っかからなければ何やってもいいという姿勢は、ニッポン放送を買収しようとした一年前から周知の事実ではなかったのだろうか。サンデープロジェクトを観てたら財部とかいう経済の専門家が、プロの投資家は誰もライブドアの株を買っていないみたいなことを言っていたが、だったら1年前にそれをなぜ言わなかったのか!この評論家が以前堀江社長を批判したことが果たしてあっただろうか。こういう警告を専門家が影響力のあるメディアで発しなかったことで、時流に流されて大損した素人の投資家がどれだけいたことだろう。

そもそも、ライブドアが成功しつづけることが有り得ない危ない会社なんていうことは、特段の知識がなくても常識があれば普通にわかるはずである。専門家であればなおさらである。しかし誰も堀江社長を非難せず、それに対して説教をたれる人間のほうが時代の空気の読めない頑迷固陋な人物として非難されてきた。これが一夜にして変わってしまった。「法律には違反したが彼のやろうしてことは決して間違ってなかった」と言う人が、ほとんどいないのはどう言うことだろうか。ライブドアのカラクリがわからなかった、というのであればジャーナリストや経済評論家などもう必要ない。強制捜査直後から「錬金術」がこと細かに解説されていたのは、専門家にとってライブドアの危うさがほとんど周知の事実であったことを示している。しかしそれまで誰も言ってこなかった。言ってこなかったのも問題だが、それを風向きがかわった今になって何の躊躇や羞恥もなく言い始めていることはもっと問題である。

堀江社長は舞台から退場するとしても、「何が悪いんですか」「だめになったらゼロに戻るだけ」といった、彼の撒き散らしたシニシズム的な個人主義は残り続けるだろう。彼は世の中の正義、道徳、常識、家族の絆などなどを全て面倒くさいものと切り捨て、まさに何も頼るべきものがない裸の個人による経済活動によって達成される、「時価総額世界一」の究極的目標だけしか信じなかった。こうした彼の思考様式は「既得権益の打破」や「市場原理」の名の下に暗黙に肯定されていた気がするが、堀江社長を批判する場合もこのような思考様式そのもの全体を問うものになるべきだろう。