新人議員の失言について

ある自民党の新人議員の軽率な発言が問題になっているようだ。

私は何か専門分野がある人なのかと思ってネットで調べてみたら、なんと正真正銘のズブズブの素人だった。ブログにスポーツと環境問題について論じていたが、「環境社会学」みたいな講義に出ているスポーツ好きの大学生が、単位のために安易なテーマで書いたレポートとしか言いようなないものである。しかもその内容が、反吐が出るほど優等生的で中身がない。私も政治は全くの素人だし正直苦手でもある。その私から見ても、自分よりも政治の知識が明らかになさそうな人物が、与党の政治家として誕生したのである。

しかし考えてみると、今回の選挙そのものが「素人」の勝利だった。知識と論理で懸命に説得し、政治のスペシャリストであることをアピールする民主党に国民は見向きもせず、「ぶっ壊す」ことだけを果敢にアピールし続けた小泉自民党を支持した。国民は細かい理屈や議論の説得力ではなく、解散総選挙を断行した小泉首相の「ぶっ壊す」という実行力を支持した。「ぶっ壊す」には専門的な能力は何も要らない。権力を持っている人物に少々の単純さと冷徹さがあれば、誰でもできることである。今回の総選挙で国民が支持したのは、このような「既得権益」を全く考慮しない「素人の蛮勇」だった。

まさにこの新人議員は、既得権益も政治の知識も文字通り全く持たない「若い」「素人」であり、逆に言うと「若い」「素人」であること以外に政治的資源を持っていないのである。今回の選挙で支持された要素を、ある種(執行部ももてあますほど)純粋かつ極端な形で代表していると言えるだろう。だから小泉首相を支持した人々は、彼の軽率な発言に失望したり「まだ若いんだから」などと弁護などしてはならない。「発言内容は軽率かもしれないが、素人らしくていいじゃないか!へたに勉強して政治家っぽくなるなよ!」とエールを送らなければ、自民党に一票を投じた意味がないだろう。しかし、本当にエールを送る人間がいそうなのが怖いところである。