補足

ちょっと補足をしておくと、数は多くないが、「中国は靖国問題や閣僚の『妄言』で傷ついている」という中国人の主張に同調し、責任はことごとく過去を直視しない日本人の側ににあるという人もいる。また日本のメディアの中国報道の「偏向」を批判し、大多数の人は反日でも何でもなく、日中友好を真面目に考えている若者も大勢いると言う人もいる。いわゆる「親中派」である。

前者について言えば、間違っている云々以前に、大多数の日本人に対してそうした説明が通用するのかどうかという緊張感と、議論と対話の姿勢が完全にかけている。中国の立場に自身を同一化させて大上段に自国を批判することの欺瞞性など、中国に対する贖罪意識が共有されていた昔ならともかく、強圧的な物言いで日本に対応する中国政府のあり方を見ている今の人が見抜けないわけがないだろう。また後者について言えば、「反日主義者」がごく少数であるなどということは、少なくとも私には自明のことである。問題は、ナショナリズムが吹き上がったり政治運動が湧き起こったりする際に、日本がその対象になりやすいという社会条件が存在していることなのである。それに両者とも、「われわれは本当の中国人の姿を知っているんだ」という特権意識があり、なにより日本における偏見や誤解がどうして生まれているのかということへの理解や配慮がまるで欠けている。

もっとも、昔はかなり多かったこういう「親中派」も、現在はほとんどお目にかかれなくなっている。「特権意識による中国弁護」がなくなったのはいいが、それにかわって「日本人の間でしか通用しない中国批判」が横行しはじめている。