石原都知事の詭弁

地方の東京の格差の話題ばかりで恐縮だが、石原慎太郎都知事が聞き捨てならないことを言っていたので。

http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/tomin.htm

石原都知事は「東京都は昼間人口370万人のためにインフラを整備・維持している」と力を込めているが、「昼間人口370万人」というのは直感的にというか、いくら考えても「やはり東京ばかりが得している」ということの証拠にはなっても、その逆には決してならないように思われる。この「370万人」の人たちは当然ながら、単に東京で仕事や雑務だけをしているわけはなく、その行き帰りに東京で食事もすれば買い物、娯楽をしているはずであり、電車やバスの交通機関を利用することも、東京にとってプラスでこそあれマイナスではない。

そもそも、「370万人」の医療や福祉の負担に目を転じれば、そのほとんどは東京ではなく彼らが居住している近隣の県が負担している。東京の会社で働いて埼玉県の郊外住宅地に住むサラリーマンが、定年後に寝たきりになったら、当然それは東京ではなく埼玉県の負担になる。この点で言えば、東京は相対的に負担が少なくて済んでいると言うべきである。

少し考えればわかる話なのに、石原都知事は相変わらずとんちんかんな議論を平然と繰り返している。彼は「水道」「電気」「橋の維持」などを東京の負担として挙げているが、普通「負担」と言えば真っ先に思い浮かぶのは医療・福祉、特に高齢者介護であるはずだろう。しかし彼はこの問題に全く言及していない。石原都知事が意図的にそうした問題を無視し、詭弁を弄していることは明白である(もっとも彼は福祉自体が大嫌いだろうが)。

石原都知事が「東京も苦労している」みたいなことを言ってしまうと、それは地方自治体の「地方ばかり苦労している」という感情的な主張と何の代わりもなく、結局地方税の問題の論争が非生産的な「苦労話」「泣き言」合戦になってしまう。私は地方への再配分は絶対に必要だと考えるが、それは「地方で生産・消費された分が公平に地方に還元される」という原則の上での話で、「東京より苦労している」からでは決してない。「苦労している」という訴えは、「馬鹿言うな俺の苦労を知らないのか」という声で簡単に押しつぶされてしまうだけである。

石原都知事が「税の原則」を重視していることは賛同できなくもないので、その「原則」の中で地方への再配分を論理を構築していけばいいだけだと思うのだが・・・。2000年前後くらいに能天気に「地方分権」を主張していた「リベラル」な学者たちは、責任をとってなんとか考えてくれと言いたい。